―日本図書館協会選定図書―
○心身相関医学の歴史と現在
古来、人々は心とからだの結びつきを当然のものと考えてきたが、実証を旨とする近代医学は、その専門化が進むとともに、目に見えない心については無視を決め込むようになった。20世紀後半、東洋文化やサブカルチャーの広がりとともに、心身相関的な考え方は代替医療という形で復活してきたが、アカデミズムの世界ではいまだ100パーセント認められているわけではない。
しかし、コンピュータや電子顕微鏡、ナノ・テクノロジーなどの進歩によって、そうした医学界の常識は覆されつつある。身体(脳・神経・免疫系)と心(感情、思考、信念)との協働作業の実態が分子レベルで解明されてきたのだ。
神経内分泌免疫学の専門家である著者は、心と身体、感情と健康の関係についての最新の知見を、その歴史的変遷をもたどりながら、医学のみならず、心理学、社会学、歴史学といったさまざまな分野を横断しつつ、幅広い視点から明快に概説する。非常に明晰かつ読みやすい文体であることから、専門家だけでなく、知的スリルに満ちた読み物として一般読者の好奇心をも満足させる、充実の一書。
【目次より】
第1章 感情と病気――分子の発見と古代の神話
第2章 感情はどこから来るのか
第3章 皮膚の外の不潔なスープ――免疫系はいかにして外界から身を護るのか
第4章 心と身体の再統合
第5章 双方向の通路――対話する脳と免疫系
第6章 脳と免疫系のコミュニケーションが断たれるとき
第7章 ストレスは病気の原因になるのか
第8章 他者とのつながり――人間関係と病気のプロセス
第9章 信じることによって治るのか
第10章 免疫系はいかにして私たちの気分を変えるのか
第11章 鎖を解かれたプロメテウス――これからの展望